S3バケット高速削除・空にするツール(バージョニング対応)

概要

  • S3コンソールの「バケットを空にする」機能がCLISDKではしづらい
    • バージョニングがオフならCLIだとaws s3 rm --recursiveで可能だが、速度が遅い
    • バージョニングがオンだとそもそもできない(やろうとすると面倒で大変)
  • S3バケットを削除する際、バケットが空でないと削除できない
    • CLIではaws s3 rb --forceで可能だが、速度が遅い
  • 空にしたいが他リソースから依存されていて、CDKのautoDeleteObjectsなどでバケット削除+再作成が出来ない
  • S3のライフサイクル機能で消そうとしても1日待たないといけない
  • とにかく、大量のオブジェクトを早急に削除したい


そんなむず痒さを解消するためのツールをOSSで公開しました。

とても楽に、高速にバケットを空にしたり、バケットごと削除したりできるようになりました。

しかも、複数バケットを(検索しつつ)一括でできます!


目次

目次


ツール名

「cls3」としました。(短い方が打ちやすいため)

読み方はわかりません。。。シーエルエススリー」としました。「clear S3」から省略しました。


ソースコード

Go言語で実装しています。

スターなど頂けると泣いて喜びます(本当モチベーションが上がるのです…!)

github.com


特徴

「空にする」も「バケットごと削除」も

最初は「バケットを空にする」ことを目的としたツールだったのですが、せっかくなのでバケットも一緒に削除する」オプション(-f|--force)もつけました。


バケット名検索・複数バケット削除

後述しますが、バケット名を検索したり、複数のバケットを一括で削除または空にすることができます。


リージョン跨ぎ

複数バケット削除において、複数のリージョンのバケットの場合でも一括で削除することができます。

※S3 Express One Zoneのための ディレクトバケット モード (-d オプション)ではリージョンをまたいだ操作はできず、1つのリージョン でのみの操作になります。リージョンは -r オプションで指定できます。


バージョニングが有効なバケット削除

バージョニングをオンにしている場合でも、オフのときと同じようにバケットを空にしたり削除したりできます。そのため、バージョニング設定を意識せずに使えます。


非現行バージョンのオブジェクトのみ削除

-o | --oldVersionsOnly オプションを使うと、新しいバージョンやバケット自体を削除せずに、古いバージョンのオブジェクトとすべての削除マーカーだけを削除することができます。

つまり、最新バージョンのオブジェクトだけを残すことができます。

このオプションは -f | --force オプションと一緒に指定することはできません。


S3 Express One Zoneのディレクトバケット削除

d | --directoryBucketsMode オプションを使用すると、S3 Express One Zone用のディレクトバケットを削除できます。

このモードでは、S3 Express One Zoneのディレクトバケットの仕様上リージョンをまたいだ操作はできず、1つのリージョン内でのみの操作になります。そのため、リージョンを -r オプションで指定してください。


削除できるオブジェクト数の制限無し

CLI, SDKで提供されるdelete-objects APIは、「1コマンドで削除できるオブジェクトの数が1000個まで」という制限がありますが、このツールでは数の制限はありません

大量のオブジェクト削除にも是非。


503エラー時のリトライ

オブジェクトが何万件もある場合、通常CLISDKで一気に削除しているとまれに S3 api側でSlowDownエラー(503エラー)が起こることがあります。

これが起きた場合cls3では、数秒待って何度か自動リトライする仕組みを入れることで対応しています。


使い方

インストール

Homebrew

brew install go-to-k/tap/cls3

Linux / Darwin (macOS) / Windows

curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/go-to-k/cls3/main/install.sh | sh
cls3 -h

# To install a specific version of cls3
# e.g. version 0.13.2
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/go-to-k/cls3/main/install.sh | sh -s "v0.13.2"
cls3 -h

aqua

aqua g -i go-to-k/cls3

バイナリ

ソースビルド(開発版)

※Go環境が必要です。

git clone https://github.com/go-to-k/cls3.git
cd cls3
make install


実行方法

cls3 -b <bucketName> [-b <bucketName>] [-p <profile>] [-r <region>] [-f|--force] [-i|--interactive] [-o|--oldVersionsOnly] [-q|--quietMode] [-d|--directoryBucketsMode]


オプション

  • -b, --bucketName
    • S3バケット
      • 対話モードでない場合は必須
      • 対話モードでは指定できない
    • 複数バケット名指定ができます
      • cls3 -b test1 -b test2
  • -p, --profile(オプション)
    • AWSプロファイル名
    • (デフォルト: 実行環境のデフォルトのプロファイルが使用されます)
  • -r, --region(オプション)
    • AWS Region
    • (デフォルト: ap-northeast-1)
      • このオプションが指定されず、AWSプロファイルがリージョンに紐付けられている場合、デフォルトのリージョンの代わりにそのリージョンが使用されます。
    • リージョン跨ぎで削除できるので、基本的には気にしなくても良いです
      • しかし、S3 Express One Zoneのディレクトバケットモード (-d オプション) では、S3の仕様上リージョンをまたいだ操作ができないため、リージョンを指定する必要があります
  • -f, --force(オプション)
  • -i, --interactive(オプション)
  • -o, --oldVersionsOnly(オプション)
    • 非現行バージョンのオブジェクトと削除マーカーのみを全て削除する
      • 新しいバージョンのオブジェクトのみをS3バケットに残すことができます
      • バージョニングがオンからオフに変更した状態でも問題なく実行できます
    • -fオプションと一緒には使えません
  • -q, --quietMode(オプション)
    • 削除数のリアルタイム表示をしません
    • CI環境などでリアルタイム削除数の表示は不要な場合におすすめです
  • -d, --directoryBucketsMode(オプション)
    • ディレクトバケット モード(S3 Express One Zone用)
    • S3の仕様上リージョンをまたいだディレクトバケットの操作ができないので、1つのリージョンのみでの操作(一覧表示・削除)になります
      • -rオプションでリージョンを指定してください


対話モード

バケット名検索

-iオプションで対話モードになり、キーワードで検索し、複数または単一のバケットを削除または空にできます。

リージョン横断での検索・削除ができるようにしているため、リージョンを意識しないで使用できます。

空でも大丈夫です。(バケットが出力されます

❯ cls3 -i
Filter a keyword of bucket names: test-goto

そして、出力されたバケットの中から削除または空にしたいバケットを選択します。

? Select buckets.
  [Use arrows to move, space to select, <right> to all, <left> to none, type to filter]
> [x]  test-goto-bucket-1
  [ ]  test-goto-bucket-2
  [x]  test-goto-bucket-3


GitHub Actions

GitHub Actionsのカスタムアクションとして、cls3のアクションを提供しています。ぜひGitHub Actionsでcls3を使ってみてください。


quietは削除数のリアルタイム表示をしないためのオプションですが、CIではリアルタイム表示は不要なケースが多いため、GitHub Actionsではデフォルトでtrueにしています。(普段CLIとして使う際はfalse)

基本的にはリージョンをまたいだバケットの削除をすることができるので、regionを指定する必要はありません。ただし、S3 Express One Zoneのディレクトバケットモード(directory-buckets-mode)を指定する場合、このモードはリージョンをまたいだ削除をすることはできないため、リージョンの指定が必要です。

また、複数バケット削除をする場合は、カンマ区切りで指定可能です。(bucket-name: YourBucket1, YourBucket2, YourBucket3)

jobs:
  cls3:
    runs-on: ubuntu-latest
    steps:
      - name: Checkout code
        uses: actions/checkout@v3
      - name: Configure AWS credentials
        uses: aws-actions/configure-aws-credentials@v3
        with:
          role-to-assume: arn:aws:iam::123456789100:role/my-github-actions-role
          # Or specify access keys.
          # aws-access-key-id: ${{ secrets.AWS_ACCESS_KEY_ID }}
          # aws-secret-access-key: ${{ secrets.AWS_SECRET_ACCESS_KEY }}
          aws-region: us-east-1
      - name: Delete bucket
        uses: go-to-k/cls3@main # Or specify the version instead of main
        with:
          bucket-name: YourBucket
          # bucket-name: YourBucket1, YourBucket2, YourBucket3 # To delete multiple buckets
          force: true # Whether to delete the bucket itself, not just the object (default: false)
          quiet: false # Hide live display of number of deletions (default: true in GitHub Actions ONLY.)
          old-versions-only: false # Delete old version objects only (including all delete-markers) (default: false)
          directory-buckets-mode: false # Directory Buckets Mode for S3 Express One Zone (default: false)
          region: us-east-1 # Specify the region in the Directory Buckets Mode for S3 Express One Zone

また、cls3のバイナリファイルをインストールした後に、自由にコマンドとして叩くことも可能です。

jobs:
  cls3:
    runs-on: ubuntu-latest
    steps:
      - name: Checkout code
        uses: actions/checkout@v3
      - name: Configure AWS credentials
        uses: aws-actions/configure-aws-credentials@v3
        with:
          role-to-assume: arn:aws:iam::123456789100:role/my-github-actions-role
          # Or specify access keys.
          # aws-access-key-id: ${{ secrets.AWS_ACCESS_KEY_ID }}
          # aws-secret-access-key: ${{ secrets.AWS_SECRET_ACCESS_KEY }}
          aws-region: us-east-1
      - name: Install cls3
        uses: go-to-k/cls3@main # Or specify the version instead of main
      - name: Run cls3
        run: |
          echo "cls3"
          cls3 -v
          cls3 -b YourBucket1 -b YourBucket2